こんにちは!
この春から広島国際青少年協会に入った広島大学教育学部初等1年の柴田七海です。
6月6日~7日の2日間にわたってオンラインで開催されたダイアローグ・プレイス(DP)について報告します。
DPはこの団体の企画として過去に何度も行われてきた歴史あるプログラムだそうです。
これまでは中高生だけ、または大学生だけで行われていたようですが、今回のDPでは大学生に混じって中高生も参加していました。(私が中高生の時はこんなに難しいこと考えていない・・と驚きました。)
ここでダイアローグ・プレイスって何?と思った方のために!
つまり「対話の場」の名を冠したこの企画では、対話を通して自分や相手の理解を深め学びや成長につなげることを目的としています。
「対話のプログラムって話すだけってこと?」って思ったあなた。
違うんです。
たった2日間で私の価値観や考え方に新しい発見や見方を沢山もたらしてしまうような凄い企画なんです。
そんなDPについて当日のプログラムをもとに紹介していきます!
1日目
まず初めに、三栗野リーダーからダイアローグ・プレイスについての説明がありました。
そこでは、ダイアローグ・プレイスに大事な事が3つ示されました。
1.忖度しない
2.遠慮しない
3.争わない
お互いの理解を深めるためにはしっかり自分の意見を言うことが必要ですが、相手に自分の考えを強要することは目的ではないのでバランスに注意しようということでした。
初めのプログラムは“自己紹介・他者理解ワーク”!
エニアグラム(性格診断的なもの)や心理テストを使いながら、自己分析をしてそれをもとに“自己紹介”をしました。
ここでのエニアグラムというのは、人間を9つのタイプに分類し、それぞれのタイプがより良く生きるためのアドバイスを示したものです。
人間をタイプに分類するなんてできるのかと疑問に思う部分もありますが、やってみると自分も周りも当てはまりすぎていて「この通りだよね」の一言でした。
一方で、講師の木村先生はタイプ分類することが目的ではないと警鐘を鳴らしておられました。
この話を聞いて、血液型分類や姓名判断など自分をタイプ分けする方法は沢山あり、エニアグラムもそのうちのひとつですが、診断結果を鵜呑みにするのではなく「自分ってこんなタイプなのか」と自分を見つめ直すきっかけにするべきだと感じました。
自己紹介の後は、“他者理解ワーク”!
“他者理解ワーク”とは、自己紹介の情報をもとにしながら、この人だったらこれを選ぶのではないか?と心理テストの回答を予想しながら、他人を紹介するというものです。
「水道の蛇口が締めても止まらなくなったとき、あなたはどうする?」
1.冷静に対処
2.なんとかなるよね!
3.慌てる
相手の話し方や、雰囲気、自己紹介の内容など様々な情報をもとに相手を分析し答えを予想するので、
普段以上に集中して相手の言葉に耳を傾けます。
エニアグラムの結果も参考にしながら話を聞くなど、様々な視点からその人のことを知ろうとすることができました。
次は“思考実験”!
思考実験とは、ある状況設定の中で「自分だったらどうするだろう?」と頭の中で実験することです。
このワークでは、他の条件は同じにしたまま、ひとつの条件のみをいくつか変えていきました。
それぞれの場合において変化する選択肢と向き合い、自分の価値観や考え方に差が出てくるかどうかについて見つめ直しました。
今回の思考実験では、“トロッコ問題”について考えました。
“トロッコ問題”とは、制御不能になったトロッコがそのまま進むと5人の命が失われ、自分の手元にあるレバーを切り替えると1人が死んでしまう時、あなたならレバーを引くかどうかを問うものです。
もちろん、人それぞれ考え方が違うのは当たり前です。
だからこそ、対話する度に新しい考え方の発見ができ、そこに面白さがあるのだと私は思います。
大学生になって数ヶ月が経ちますが、コロナの影響で人とのつながりを実感する機会が限られ、自分と向き合う時間ばかりでした。
そんな中、色んな人たちと対話したことでとても良い刺激になりました。
2日目
2日目は、8時半に集合でした。
まず初めは集中して1時間勉強!各々が自由にやりたい勉強をします。
中高生は学校や塾の宿題、大学生はレポートや読書をしている人もいました。
ひとりだと集中力がなかなか続かないという人もいるかも知れませんが、画面越しに頑張っている仲間を見ると1時間なんてあっという間でしたね!
中学生の子からは、「もっとしたかった~」という声も。
みんなで頑張ると不思議とできちゃうこともあるよね!
勉強の後は、“コンセンサスゲーム・船長の決断”!
このテーマで、10項目の優先順位を決めました。まず個人で決めた後、チームとしての順位を決定しました。
ポイントは「全員がちゃんと納得すること。」
「救急車だったらどんなふうに対応しているだろう?」などと身近な例を用いて想像もしてみました。
色んな想定をしたことで、チームとしての順位も全員が納得して決定できました。
“船長の決断”が後述の“価値の序列”と違うのは、順位に正解が存在した点です。
命を助けるための最善策が存在するということですね。
いよいよ、最後のプログラムである“価値の序列”。
さて、突然ですが質問です!
その順番について人に説明できるような明確な理由を持てていますか?
なんとなく、「愛」は「お金」より大事だよな~と思っていたとしても、そうは思っていない人に上手く説明できるでしょうか?
この“価値の序列”のワークが、私の中に変化をもたらします。
個人で順位付けをした際に、私は地位と名声について考えたことも無かったので、この2つは無くても生きていけそうだな~という軽い理由で、どちらも下位に持ってきていました。
自分で順位を出した後は、グループのメンバーとそれを共有し、「そのグループ全体で順位付けるなら」という条件で互いになぜその順番なのかを話し合いました。
私の考えとはうってかわって、同じグループの1人に、地位は下の方の順位なのに、名声は1位にしている子がいました。
まず、「地位と名声ってそんな違う?」と思ったし、「なんで名声が上にあるんだろう?」と疑問に思いました。
彼女によると、「仮に能力が低くても高い地位につくことはできる、だけど名声は努力して、周りから認められた人しか得ることができない。だから名声は自分の努力が認められる気がするので、重要視しているのだ」と。
なんとなくでしか答えを出せなかった自分に対して、自分の価値観についてここまで上手く説明できるのかと驚きました。
今までは、自分の価値観やその捉え方がそう簡単に揺らぐものではないと思っていました。
ですが、彼女の話を聞いて、私の中で価値観の捉え方に変化がありました。もちろん、私の価値観の順位が入れ替わって、彼女のように「1位は名声だ!」というほど大きく変化したわけではありません。
しかしこの話を聞いて、今まで私の人生に必要だと認識したことさえ無かった名声を「なるほど、名声って実は良いものでは?」と思い始める自分に出会いました。いくつになっても知らなかったことを知る喜びは計り知れないものですね。
中高生と大学生は、グループが分かれていたので自分は中高生の対話のやりとりは直接見れていないんですが、実はこのブログを書くためにZoomの録画を見ました。
驚いたのは、中高生が大学生と遜色ないくらい自分自身の考えを持っていて、そしてそれを伝えるために一生懸命自分の言葉を紡いでいたことでした。その中で例えば、
「ぼくの自己実現は穏やかに自分の好きなことを出来る自由な時間を持つことだから、そのためにそもそも健康じゃないといけない。そしてその中で、お金が必要で、地位と名声みたいに他の人に影響されるものは、ぼくはいらないと思う。だって、これってなくても生きていけるし、俺は魅力感じない。」
「そもそも愛情ってどういう意味なん?人によって違う。自分は人が自分に向ける愛情だと思ったけど、自分が与える愛情のこと言ってる人もいて、まずそこから話し合わないとじゃない?」
「まって、でも、それを言ったら健康安全も意味によって変わってくるよ。一生病気も怪我もしないでいることだったらさすがにそれがいいよね。」なんてやりとりが繰り広げられていました。
大学生と同じように、中高生のチームでも次々と価値の順位が変わっていき、一人ひとりが自分自身の価値観に一生懸命向き合っていました。
彼らだけでは対話が難しいときにそれを支えるファシリテーターの大学生がいましたが、プログラムが進むに連れ、 彼らの役割は先んじた対話を引っ張る形からそっと背中を押す程度に変わっていたのです。
自分にもこんな時間が中高生時代にあったら、なんて動画を見ながら考えていました。
この“価値の序列”では、チームとしての順位を決めることが目標でしたが、結局どこのチームも話し合いはまとまりませんでした。
(三栗野リーダー曰くDPではいつも決まらないそうです笑)
でも、人それぞれ大切にしているものは違うからそれは当たり前。それに、コンセンサスゲームと違って正解がありません。
価値観の押しつけなんてできませんもんね!
チームとしての順位付けはできなくても、自分が大切にしていたものに気づいたり、自分とは全く違う考えの人の話を聞いて、「なるほどなあ」と思ったり。
私たちはこの2日間で、対話をするために自分の考えや価値観を伝えようと一生懸命言葉を探しました。
そうすると、自分の中で今までより深く考えるようになります。
なぜなら普段、言語化しないようなことを言葉にするってとても難しいからです。
難しいですが、「なんでそう考えるの?」と質問しあうことで、お互いに自らの考えを深めていけました。
だけど、そもそも価値観ってそれぞれが長い時間をかけて形成したものだから、相手に理解してもらえるような説明をするのはなかなか難しいのが現実です。
だから、伝える側は100%伝えよう!と意気込み過ぎず、ゆっくり丁寧に、
聞く側は全部を吸収しなきゃと無理するのではなく、受け止めるような心持ちでいれば、
もっと客観的にお互いの価値観の差に焦点を当てることができるのではないでしょうか?
2日間のDPを通して、考えるだけでなく、「なぜ?」「どうして?」と質問し合ったり、お互いに意見をぶつけたりすることで、様々な視点から物事をみることができ、「みんな違ってみんないい」と強く実感しました。
皆さんも対話してみませんか?
「価値観」とかなんだか難しそうと言って普段は考えないようなことも、DPに参加すれば、意識するきっかけになると思います!
もし参加すれば、中学生から大学生まで年齢がバラバラで初対面の人がいる中だったとしても、
気づいたらこんな風に楽しそうに対話してるかもしれませんよ!!