『サマースクールの目的と理念』
サマースクールのパンフレット、リーダー研修の折などに使用された『サマースクールの目的と理念』をご紹介いたします。
※残念ながら、最初の執筆がいつ頃なのかは不明です。
檜山先生から、当時の情報をいただきました。以下、檜山先生からの解説です。
『この原稿は出典があるのです。出典は、当時、林先生の愛読しておられた「キャンプカウンセリング」から一部引用されております。中身はサマースクールに置き換えてあるのですが、タイトルは皆同じです。元の文章は、 「キャンプは理想的な学習環境を提供する」 「キャンプには楽しみが満ちている」 「キャンプはよい習慣と良い性格をつくる」 「キャンプは社会的に適応させる」 「キャンプは安全と健康をまもる」 「キャンプは自然に対する関心と愛情を育てる」 それぞれの中身はサマースクールに合わせて変えてあります。 この本の訳者が林先生(YMCA時代)の師匠?兄貴?にあたる兼松保一という人なので、理論が染み付いていたのかもしれませんね。』 (2012年7月18日) |
引用文献:
『キャンプ・カウンセリング』 A.V.ミッチェル (著), I.B.クロフォード (著), 兼松 保一 (翻訳)
出版社: ベースボール・マガジン社 (1966)
兼松 保一氏: 1927年東京都生まれ、1998年ご逝去
中央大学教授、担当科目「野外教育」など、中央大学兼松学校を主宰
(役職)日本ユースホステル協会(元)理事長
兼松 保一氏氏関係参考アドレス: 兼松保一理事長
サマースクールの目的と理念
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はじめに
サマースクールでの少年たちを観察していると、学校での生活や、家庭での生活からは考えられないような生活ぶりが目に入ってくる。
こどもとは、おどろくほどの率直さ、予測できない考え方と行動力、大きなわらい声、なんともいえない奇声、信じられないほどの誠実さと情熱、そして、自然の新鮮さ、そういったいろいろな面をもっている。
サマースクールでは、こどもたちはとにかく一日じゅう動きまわっている。
部屋のなかで、なにか考えこんでいたり、グラウンドを走りまわってみたり、山にのぼったり、木にのぼってゆすってみたり、水のみわけもなく水を流してみたり、あるいは、リーダーをつかまえて議論を◎◎場で、ふっかけてみたり、リーダーの腕にぶらさがって、リーダーを困らせたり、背中にとびついて甘えたり、また、リーダーをしたってつきまとっているこどももいる。
こどもとは、顔に泥をつけていても気にならないし、よごれたシャツや、破れたズボンも平気な、情熱のかたまりである。
とにかく多くの問題をかかえた、えたいの知れない人間である。だから、リーダーたちは、一日じゅう片ときでも、こどもたちのことを忘れているなどというときでも、◎◎ことはできない。
彼らは、かん高い声で歌ったり、つんざくような声でさわいだり、ときには、カンシャク玉を破裂させたり、仲のよいともだちを突きとばしたり、感情にかられてなぐりあいをしたり、泣きだしたりする。
大きさや形、性質にかかわらず、どんな生きものでも好む。インディアンや、海賊のような身なりをすることをこのみ、また、冒険をしたり、探険にでかけることに眼をかがやかせ、ドンチャン騒ぎすることが大好きで、ひとりでいるより、大勢の人といっしょにいなければ、ションボリする。
そして、リーダーには、自分のなまえをだれよりも、まず第一に呼んでもらいたいのである。また、あわないことばかりいっているくせに、つぎの瞬間には、あたたかい思いやりのもちぬしであることをしめす。なんでもりくつに都合よく泣きだしたり、事態によっては、すぐ興奮したりするのも彼らの特性である。
こどもとは、二本の腕と、二本の足をつけた不思議な動物で、生命力にあふれ、ともだちや、リーダーのことをしらべてやろうとウズウズしており、それもサマースクールの第一日目から実行に移すのである。
インディアンゴッコ、夜みせゴッコ、サマースクール村のいろいろなお店やさん、社長になったり、社員になったり、小さなひとつの社会で、ガバス紙幣を流通させておとなぶったり、ファイヤーをかこんで感激の涙にくれるなど、サマースクールのこどもたちくらい、楽しみ、多くの思い出をつくるものはないだろう。
消灯、就寝の音楽がながれ、こどもたちがその不思議な体を横にして、リーダーの顔を心細げに見上げるとき、リーダーは、そのこどもが、真に自分のみちびきを必要とし、そして、今日もいっしょにすばらしい一日をすごしたともだちであると感じ、もっともあたたかいしあわせにひたるときである。